今さら聞けない肉の常識

第59回
<鶏肉の特性>   日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 「最近の鶏肉は柔らかいだけで味がない。昔の鶏肉はおいしかった」と郷愁を込めて年配の人達がよく口にします。本当にそうなのでしょうか。
 鶏には大別して肉用と卵用があり、スーパー等で販売されている鶏肉は普通ブロイラーと呼ばれている肉用鶏なのです。第2次世界大戦中、アメリカで研究開発され、1960年に日本に輸入されました。1965年頃から現在のような本格的生産システムが組まれ、現在では100万羽単位の超大規模養鶏場も出現しています。
 アメリカでの開発目的は「より少ない飼料で、より多くの肉を、より早く作る」という肉不足解決のためで、肉の味についてはあまり考えないようでした。その結果、飼料要求率(生体1s増加させるために必要な飼料の量)は2と低く、約50gのヒナが8週齢後2.5sの若鶏となって出荷されるのです。ちなみに、ほかの飼料要求率は、白色レグホン6.7、コーチン4.0、肉牛8.0、肉豚3.5となっています。
 ブロイラーは短期間で効率良く大量に飼育するのには最適ですが、肉色は赤みが薄く、味は淡泊で、肉質は柔らかく、年配の日本人には物足りないようです。反面、脂肪分が少なく、柔らかい肉でタンパク質を摂取するという目的には最適ともいえます。食味の劣る点は、香辛料等で自分の好みの味付けにすれば良いわけで、肉に味を付けて食べる鶏肉なのです。一方昔の鶏肉は、肉から味を引き出して食べる鶏肉です。「水炊き」や「鶏ガラのラーメンスープ」など肉の旨味を引き出して食べる料理には、20週齢飼育の鶏肉に優るものはありません。
 ブロイラーとは英語のブロイル(Broi1=直火で焼く)からきた言葉で、アメリカでは若鶏の料理法の1つですが、日本では肉用種・大量生産鶏肉を総称してブロイラーと呼んでいます。
 筋肉はと畜後死後硬直が姶まり、やがて解硬し、熟成を経て食べごろの食肉へと変化しますが、その熟成期間は牛肉が約10日、豚肉が約5日、鶏肉は半日〜1日です。鶏肉の場合、肉の旨味成分の含有量がと畜後7時間前後がピークで、以後分解されて減少していきます。このことを重視してスーパーなどでは朝じめ(朝びき)の鶏肉を並べているわけです。
 高タンパク、低脂肪でヘルシーであることから、鶏肉を原料にしたソーセージ類も数多く開発されています。同じ鶏肉でも、ムネ肉(白筋、速筋)とモモ肉(赤筋・遅筋)とでは、ミオシンの加熱ゲル強度が違いますので、これらの部位の配合割合によって結着性が変わってくることを考慮して製造しているはずです。 (鏡晃)

参考図書:図解キッチンデリカ専科・ミートジャーナル社。鶏肉の本、松本順一・三水仕。
1998.4 ミートジャーナル



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