今さら聞けない肉の常識

第51回
<スネ肉がひき肉に向く理由〉 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 スネ肉はスジが多く硬いため,そのままでは長時間煮込むシチューくらいにしか利用できませんが,ひき肉にすると多くのおいしい料理の素材に変身します。スネのように運動量が多く,小さい筋肉が集まっている部位では,筋肉自身も硬く,また筋肉量に比して各種の膜や腱の割合が他の部位よりも多いため,スネ肉は硬いのです。
 膜や腱は結合織と呼ばれ,その重要な成分はコラーゲンというタンパク質です。コラーゲン分子にはハイドロキシブローリンという特異的なアミノ酸が存在し,この量を定量することによって結合織の量を知ることができます。
 表Tは牛と豚のスネと他の部位の筋肉におけるハイドロキシプローリン含量を示したものです。スネの筋肉のハイ・ドロキシプローリン量がヒレやサーロインの3倍以上になっていることが分かります。つまり,スネ肉は他の部位の肉よりも結合織の割合がはるかに多いのです。
 こうした特性をもつスネ肉を他の端肉などとともにチョッバーにかけて挽くと,筋線維や結合織が切断され,脂肪とよく混ざって口当たりのソフトな料理素材となります。
 さらにコラーゲンは加熱すると約65℃でいったん縮みますが,加熱を続けると80℃前後で水に可溶性の分子であるゼラチンに変わり,ひき肉料理の柔らかさを増します。
 最近ではコラーゲンは皮膚の張りを保つため不可欠な物質として化粧品などにも採用され,またコラーゲンを摂取すると免疫力が高まるともいわれています。このような話題に富んだコラーゲンを多く含むスジは,ひき肉以外の肉料理素材からは取り除かれてしまうので,ひき肉だけがはとんど唯一の供給源といえます。
 ひき肉というと何となく脂っこいというイメージが強いようですが,表Uから分かるように100g当たりの脂肪量は牛ひき肉で23・1g,豚ひき肉で19・9gです。脂身つきの牛リブロースの30.8g,豚ロースの25.7gに比べてみても意外と少ないことが分かります。牛スネ肉の脂肪は5.6gと少ないのですが(豚スネ肉も同じ傾向),他の端肉などを挽き込んでしまうため23.1gに増えてしまいます。
 またひき肉は非常に良い肉色をしていますが,この理由は表UのFe(鉄)の項をみますと(Fe量は肉色素ミオグロビンの量に比例する)理解できます。ビタミンに関しては,合い挽きにすることによって,牛肉に少なくて豚肉に多いBlを補給することができます。(平野正男)
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