今さら聞けない肉の常識

第50回
<ソーセージを生かすスパイス〉 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 ソーセージという名称の由来を尋ねていくと,いくつかの説にぶつかります。2,3ある訪の中で,ソー(ドイツ語でSau英語ではSow=雌豚)とスパイスのセージ(Sage)が合成されてソーセージ(Sausage)になったという説,つまり雌豚の肉にほろ苦いスパイスで味付けした食物ということになりますが,この説こそ本文のタイトルに似つかわしいと思われます。
 と畜・解体した豚を頭の先から足の先まで食用として,冬越しのタンパク源にするため脂肪の多いくず肉や血をなんとかおいしく味わおうと工夫した昔の人にとって,脂肪臭を消してくれるセージは,重宝なスパイスだったに違いありません。
 肉塊の加工品にはスパイスはほとんど使われませんが,ソーセージのように肉を細切し,ミキサーやサイレントカッターで配合して製造する製品にとってスパイスは抗菌,防カビ,抗酸化作用という点からも必要なものです。
 このほかに前回の肉料理とスパイスでとりあげましたが,スパイスにはいやな臭いを消したり,マスキングしたりする矯臭作用,おいしそうな香りをつけて食欲をそそる賦香作用,舌を刺激する辛味が消化液の分泌を促進する辛味作用があります。
 ソーセージ製造で一般的に使用されるスパイス(下表)について,肉の臭み消しのメカニズムを調べてみますと,ナツメグやオールスパイスは,その芳香によって臭みをカバーするマスキング効果によります。これに対しオニオンやガーリックの場合は消臭メカニズムが少し異なります。オニオン,ガーリック中のイオウ化合物が式1によって生成され,肉類のタンパク質と反応して独特の風味を出すためです。さらに加熱を続けると,これら成分は還元され,オニオンやガーリックの臭みも肉の臭みもなくなります。すなわち,アリシンを生成するユリ科の仲間の消臭作用は化学反応によるものです。またセージの芳香はかなり強く,肉類の脂肪臭によく調和して,肉の臭みを消すのに抜群の力を発揮します。
 スパイスの精油成分はカビや酵母,細菌などに対して有効な成分のあることが知られていますが,表中のすべてのスパイスは抗菌,抗力ビ作用について対象となる細菌やカビ,酵母の違いと抗菌力の程度の差はあっても,すべてに抗菌,抗力ビ作用が認められます。
 食肉類の酸化防止に有効なスパイスの精油成分としては,ナツメグやオールスパイス,ペイリープスのオイゲノールなどフェノール系の化合物,セージなどのカルノソールやロスマノールが抗酸化成分として知られています。式2で抗酸化成分AH2はフリーラジカル連鎖反応により生成したペルオキシラジカルROO・を捕捉し,自らはフエノキシラジカルAH・となって自動酸化を阻止する作用があります。      (平野正男)
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