今さら聞けない肉の常識

第49回
<肉料理とスパイス>   日本獣医畜産大学畜産食品工学科向学教室

独特の臭いをもつ色々な肉を料理する際に、スパイスを臭い消しに利用することは効果的です。食品の香り、風味などの善し悪しは、個人個人の嗜好性によって異なります。まして世界各国をみれば、気候風土の異なった様々な国柄が出て当然ですが、面白いことに肉類の臭いをとるスパイスの使い方には、よく似た共通点がみられます。
例えば、欧米で豚肉の臭い消しにジンジャーを使うポークジンジャーがありますが、この組み合わせは結構日本人の好みに合うようです。醤油をきかせてポークジンジャーを和風にしたような豚肉のショウガ焼きですとか、もつの煮込みには薄切りのショウガが使われます。
スパイスで肉の臭いを消す使い方として、世界的にユリ科のスパイスが多く使われています。ガーリック、オニオン、エシャロットなどは欧米の肉料理に欠かせないユリ科のスパイスです。日本のネギ、ニラ、ラッキョウ、ユリ根などもユリ科の仲間です。すき焼きではネギが使われますし、中国料理ではレバーによくニラを組み合わせます。
このほかにも、肉類の臭いを消す効果をもつスパイスは多数ありますが、作用のしかたは一様でなく、スパイスの強い芳香により臭いを弱めたり、臭いの成分を化学的に分解したりします。従って肉料理にスパイスを使う時、それらのもつ機能を知って、目的にかなった使い方をするのが効果的といえます。
 スパイスのもつ機能は、直接的な効果と、この第一の機能によって二次的に引き起こされる効果があります(表1)。例えば、コショウはいい匂いがしますし、食べれば辛い味がします。パプリカは油の入ったスープに加えると赤い鮮やかな色がつきます。これらは五感で確められる一次的、直接的機能です。
 そして、このコショウやパプリカを使ってとんかつを揚げたり、ビーフシチューを作ったりしたら、いい匂い、おいしそうな色、ほどよい辛さの刺激でモリモリ食べられたという場合は二次的効果といえます。コショウやパプリカ自体に食欲増進作用があるというより、それらをうまく肉料理に使った結果として生まれた効用だからです。
 スパイスには表2にあげるような4つの基本作用があることを知れば、料理の目的に応じて効果的なスパイスを選べるはずです。スパイスと素材との適性を考え、下ごしらえにはどのスパイスを使うか、加熱時には、また調理後にはどんなスパイスを使ったらおいしいかを考えるだけでも楽しいものです。

参考図書
1)煩製自慢、森田重広、雄鶏社、1989年
2)スパイスのサイエンス、武政三男、文国社、1990年。
(平野正男)
1997.6


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