今さら聞けない肉の常識

第46回
<「ケーシング」ってなに> 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 食肉および食肉製品において,塩漬肉・調味肉を直接充填する一次包装用の資材を称してケーシングといっていますが,本来ソーセージ原料を詰める動物の消化器系腸類をケーシングと呼んでいたようです。現在,ケーシングは天然腸を用いたもののほか,天然の素材を加工したもの,石油製品等を含めた人工ケーシングが種々作られ目的に応じた利用がされております。分類方法はいろいろありますが,可食性で分類したのが下図です。
 天然腸ケーシングは,日本では主に豚・羊の消化器系が使われますが,外国では牛の消化器系や膀胱等も使われています。天然暢の特使は@皮ごと食べれるA肉とケーシングが良く密着し,パリッとした食感があるB燻煙が透過するCシワが生じにくいD独特の形になる等,ソーセージ類に対して極めて適合しています。現在,日本で使われている天然腸は中国,オーストラリア,ニュージーランド等からの輸入です。100ヤード(約92m)を1束とした「ハンク」という単位で取引され,1ハンス16本以内(1本1.5m以上)の規格品が塩漬状態で輸入されます。
 「曲がっているのが自然のうまさ」というのが羊腸輸入組合のキャッチフレーズですが,腸と腸の問に腸内膜が張ってあり,その付着部分だった靭帯の痕跡があるため天然腸のウインナーは曲がってしまうのです。
 しかしコラーゲン加工ケーシングにも曲がるように加工した製品が出てきましたので,外観だけで区別するのは難しくなってきたようです。大きな違いは,やはり食べた時のあのパリッとした歯ごたえでしょう。
 天然ケーシング以外は人工ケーシングですが,コラーゲンケーシングは天然腸と同じ動物性タンパク質のコラーゲンを分解再加工したものです。1920年代にドイツで開発,天然腸の良い点を引き継ぎ,また悪い点をカバーした製品としてドイツ,アメリカ,チェコ,日本(ニッピケーシング)等で作られ,世界各国で使われています。
 セルローズ系ケーシングは植物繊維のセルローズを原料として作られますが,製造方法によって,木材パルプを分解しビスコース法で作られたものと,綿繊維を特殊加工して作られたものがあります。いずれも燻煙の透過性があり,強く大量生産ができ,扱いやすくケーシングに最適の特徴をもっています。
 セルローズはセルラーゼという酵素によって少糖類に分解され,最後にはD−グルコースになりますが,残念ながら人間はセルラーゼをもっていませんのでセルローズを消化吸収することはできません。ただ,食物繊維として体内に入ったセルローズは便秘防止等の効果がありますので,セルローズの入った食物,飲料水が市販されています。
 石油化学製品の塩化ビニリデン系ケーシングは,不可食,燻煙不透過ですが,熱伸縮佐,密閉性,耐油,耐湿,着色が簡単で安価等の特色があります。魚肉ソーセージ普及の最大の功労者でしょう。   (鏡 晃)
第47回へ