今さら聞けない肉の常識

第45回
<豚の月齢による肉質の違い> 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室
豚肉は食品としてすばらしいものです。動物性タンパク質として優れているだけでなく、ビタミンB1が畜肉の中でずば抜けて多く、豚肉1009あたりロースで0.88mg、ヒレで1.29mg、モモで1.00mgという具合で、1日の成人所要量に匹敵する量です。また、豚の脂肪は多価不飽和脂肪酸が多く、コレステロールは牛肉、鶏肉等に比べても少ないのが特徴といえますが、今回は豚肉の月齢による肉質の違いを考えてみます。
 肉豚の飼育に際して体構成成分の発達をみますと、前期に骨格と筋肉が発達し、後期には筋肉の発達と同時に脂肪が急激に蓄積します(図)。筋肉、脂肪、胃の発達過程は大型種と中型種で異なり、品種や肉の利用目的によって飼育日数が異なりますが、日本で飼育されている大型種の場合、産肉の効率性から6ヵ月飼育によって生体重96〜105s、枝肉で60〜65sでの出荷が基準とされています。  しかし、実際には肉の締まりをよくするため、もう少し日数をかけて出荷しているようですが、日数を延長しても、と体重が増え、肉色が濃くなるものの、保水性がわずかながら低下するので、赤肉の品質改善という効果は少ないようです(表I)。
 表I、表Uより、飼育日数の増加は筋肉内脂肪とミオグロビン(肉色素)含量が非常に増加し、総窒素量のわずかな増加と水分の減少が明らかに起きています。豚肉の水分含量の減少と保水性の減少は、豚肉の柔らかさが加齢に伴って減少していくことを示すものです。さらに豚肉の硬さの要因である結合織は、筋線維を包んでいる各橦の膜ですが、これらの膜の主要成分であるコラーゲン線維が、加齢に伴って分子同士で橋かけ結合を作って丈夫になり、若い豚肉より硬くなります。
 若いといえば、丸焼きに使われる仔豚は乳離れ前の生後1〜2ヵ月で5〜9sのものがおいしいといわれますが、この頃の仔豚の結合織は塩可溶性のコラーゲンが多く、また、架橋結合もできていないため非常に柔らかい。丸焼きの中で耳と皮はとくにおいしいといわれますが、これもコラーゲン線維が熱にも強い架橋結合を作っていないためです。
 そして、肉質は柔らかいが、まだ風味に欠けるため、これを補うためにもパセリやクローブ、エシャロット、玉ねぎ、べ一コンなどの詰め物をして焼く料理法もあります。ミオグロビン含量は、最初は急激に、あとは緩やかに増えます。そのため、豚肉の色は生後160日以前では薄く、生後160〜190日位までが好ましい色合いになります。それ以後は赤味が濃くなっていきます。従って老齢豚になると赤味が非常に濃くなり、脂肪も増え、しかもコラーゲン線維の架橋結合の増加の結果、硬い肉になってしまいます。(平野正男)
1997.2 ミートジャーナル




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