今さら聞けない肉の常識

第43回
く地鶏はなぜおいしいか> 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 年の瀬が近づき,街角にクリスマスの雰囲気が漂い,肉屋さんなどの店頭に丸ごとのローストチキンが並ぶ頃となりました。昨今では.鶏肉といえばプロイラーを指すようになっていますが,肉味の淡白さに不満をもつ向きも多く,食生活の多様化に伴って地鶏への郷愁が大きくなっているようです。
 鶏肉は他の肉類に比べ低カロリー.高タンパク質で,必須アミノ酸をバランスよく含んで,しかもアミノ酸スコア100という良質のタンバタ質なのです。こんな結構な鶏肉なのですが,ブロイラーと地鶏との間にできた違いは何なのでしょうか。
 ブロイラーとは,本来プロイル(焼く)用の若鶏のことですが,3カ月未満という短期間に成長し,飼料効率が良く,大量生産される鶏を指すようになりました。ブロイラー専用種は生後8〜14週で出荷され,そのときの体重は2.5kg前後になります。一方,地鶏には秋田の比内鶏,岐阜の美濃かしわ,鹿児島の薩摩鶏,名古屋コーチンなどがあります。これら地鶏は体重2kgになるのに20週位かかります。このようにブロイラーと地鶏とでは,鶏種も飼料も飼育期間も生産に対する考え方もまるで違います。
 そして放し飼いによる健康的な地鶏と,密飼いによるブロイラー,この飼育環境の違いが運動量の差として現れ,飼育期間の大きな違いと相まって肉質に影響を及ぼします。
 鶏肉は本来生後20週位で味,歯ごたえともに最高に達します。8週位で出荷される若鶏では,どんな鶏でも肉はやわらかいだけで,味も淡白そのものです。若鶏と成鶏の100gあたり肉成分を比較してみますと,もも肉の場合でタンパク質が若鶏18.Og,成鶏20.7ぎ,鉄分は若鶏1.0mg,成鶏2.1gと成鶏の方が多くなっています。飼育期の差は明らかに筋肉成分の違いを生じ,さらに,運動できる環境にある地鶏は運動により筋線維が太り,引き締まって歯ごたえがよくなります。また酸素貯蔵の役目をし,運動機能を助けるミオグロビン(鉄分)の増加,呼吸酵素,筋グリコーゲンの貯蔵の増加をもたらすことが分かっています。従って風味がよりよくなることが期待でさます。
 このように考えますと.ブロイラーでも飼育期間を長くし,健康的に運動できるように育てられた鶏なら,品質的に良い鶏肉を得ることができます.
(平野正男) 【参考図書】食肉製品の知識(鈴木管者)四訂日本食品標準準成分
表(科学技術庁)
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