今さら聞けない肉の常識

第39回
<肉を軟らかく調理する>
(3)植物由来のプロテアーゼによる軟化    日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 今回はプロテアーゼ(タンパク分解酵素)による軟化について考えてみます。プロテアーゼを利用する場合は、原料により2種類に大別することができます。1つは微生物由来のものと、もう1つは植物由来のプロテアーゼを利用する場合です。
 微生物プロテアーゼは多くの場合、味噌、しょうゆ、納豆のようにすでに食品として利用されている菌の生産するプロテアーゼの利用が考えられているようで、安全性に問題はないと思われます。また植物由来のプロテアーゼも安全性に問題はなく、入手、価格の面でも有利のようです。
 食肉関連業者が肉を軟化する際には、これら微生物由来のものと植物由来のもの両方とも利用します。例えば、アスペルギルス株のプロテアーゼ、バチルス株のエラスターゼ等とパパイアのパパイン、イチヂクのフィシン、パイナップルのブロメリン等の植物由来のプロテアーゼが単独あるいは組み合わせで使用することが多いようです。
 実際の方法としては、@と畜直前に動物体内に注入するAと畜後と体に注入するB酵素を溶液か粉末の状態で局所的に塗布する一等があります。
 これら外因性の酵素は、筋原線維のタンパク質だけではなく、結合組織のコラーゲンやエラスチンにも作用することが知られています。
 しかし、これらは家庭での調理では酵素類の入手、取扱い等の点で一般的ではありません。家庭で肉を軟らかく調理するためにはキウイフルーツや生姜の絞り汁を用います。果物や野菜はプロテアーゼを含むことが多く、これら絞り汁を肉に振りかけてから調理すると効果があります。肉の塊では絞り汁のかかったところだけが部分的に加水分解が起こり、表面のみが軟らかくなってしまうので、フォークや串などで刺して中心部まで絞り汁を浸透させることが必要です。
 食肉軟化の効果が認められ、軟化剤として使用可能な植物としてキウイフルーツ、洋梨、生姜、メロンをあげる報告があります。この酵素活性の至適温度とpHを下表に示しました1)。これら植物由来のプロテアーゼは筋原線維の小片化を促して食肉を軟化させるもので、ミオシンやアクチンは早い段階では分解されません。
 おそらく結合組織のタンパク質が優先的に分解されて、筋原線維のタンパク質が分解されるのはもっと後と段階になってからと思われます。表に示したもののほかに、前述のパパイヤ、イチヂク、パイナップル等が食肉軟化の効果が認められています。

 参考図書
1)酵素処理による食肉の軟化、石下真人、鮫島邦彦、食肉の科学36,6.1995
2)MEAT SCINCE Fourth Edition, R.A.LAWRIE,Pergamon PRESS
(平野正男)
1996.8 ミートジャーナル



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