今さら聞けない肉の常識

第38回
<肉を軟らかく調理する>
(2)マリネード処理すると軟らかくなる理由

日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 食肉、野菜、魚介類などマリネード処理によって、嗜好性、保存性を高めることを行いますが、マリネードとは、酢、ブドウ酒、油、香辛料、ハーブなどで調合したものです。マリネード処理をしますと筋線維、結合組織が膨潤するために調理肉の軟らかさが増します。この効果は醤油、清酒、レモン汁などにもみられます。
 では、なぜマリネード処理によって肉の軟化が起こるのかを考えてみます。いくつかのマリネード主要液のpHをみると、ワインビネガーpH2.5、赤ブドウ酒pH4.5、レモン汁pH2.8、醤油pH4.7など、それぞれかなりの酸性を示します。マリネード処理液に共通する点は酸性であるということです。
 肉が酸性状態になったとき、肉の軟化に関係のある2つの変化が起こります。1つは保水性の向上であり、もう1つは筋肉に内在する酸性プロテアーゼの活性化です。
 新鮮肉の保水性は、下図に示したように、筋タンパク質の等電点に相当するpH5付近で最低値を示し、それより酸性側でもアルカリ性側でも増大します。
 マリネード処理によって肉のpHは4前後に低下します。そこで、酸とは陽子を与える化合物であり、塩基とは陽子を受ける化合物であるという定義から、pHが低下した肉は図の(a)に示すように、過剰の十イオンの存在による反発作用によって筋線維間は押し広げられ、水を保持できる空間が増し、保水性が向上して軟らかく調理できるということです。
 もう1つの効果をもたらす、低pHで活性化する筋肉内酸性プロテアーゼは、リソゾームの酵素で、いくつかの低pH領域において筋原線維の複数のタンパク質に作用します。また、結合組織のタンパク質であるコラーゲン線維の架橋にも作用します。その結果肉の軟化がもたらされると考えられています。

参考図書
1.The Science of Meat and Meat Products
J.F.Price and B.S.Schweigert W.H,FREEMAN&COMPANY
2.食肉・肉製品の科学、森田重慶 監修、学窓社
(平野正男)



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