今さら聞けない肉の常識

第36回
<水分活性とは> 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

日本においても生ハム等の非加熱食肉製品の消費量が増えてきましたが、製品紹介パンフレット等に「AW0.94以下」と書いてあるのにお気付きでしょうか。
 動植物は生きていくために水分が必要ですが、微生物も発育するためには水分が必要なのです。ただ、微生物は一般的には純水中では発育しません。わずかにでも栄養分が入っていることが必要ですが、逆に栄養分が多過ぎると発育は衰えてきます。60〜80%の水分と適度な栄養分を含んでいる、肉・肉加工食品は微生物の発育にとって好条件といえるでしょう。
 肉・肉加工食品中の水分は、結合水と自由水との2つの形態をとっています。結合水は蛋白質や炭水化物等に水素結合し、コロイドを安定化している水。一方の自由水は組織内に含まれ、結合水以外の束縛されていない水で各種の水溶性成分を含み、自由な熱力学的運動をし、0℃以下で氷になってしまう水です。微生物が発育に利用できるのは自由水と非常に弱く結合した結合水のみですが、実際には結合水と自由水との区別が明確にはできにくいところがあります。
 食品中に含まれた水分は、食品のおかれた環境の湿度によって変化してきます。周囲の湿度が低ければ食品は乾燥しますし、反対に湿度が高ければ食品は吸湿し湿ってきます。
 微生物の発育には水分以外に温度、pH、栄養素等も絶対必要でどれかひとつ欠けても発育はできません。保存のために古くから行われてきた乾燥法や塩蔵法などは、食品から微生物の発育に必要な水分を取り去るという以外に、塩分等が食品中の水に溶け込むことにより、微生物が発育に利用できる自由水を少なくすることになるのです。
 同じ水分量でも結合水か自由水かによって微生物の発育が違ってくるということは、変敗の速度も違ってきますので、食品中の全水分量(%)で考えるよりも、水分の活性度で考えた方がよいということから、水分活性(AW)の尺度ができたのです。
 水分活性(AW)は、食品を入れた密閉容器内での蒸気圧(Po)とその温度における最大水蒸気圧(Po)との比を表わしたもので、次の式になります。
AW=P/Po
 たとえば食品が純水の場合、P,Poが同じでAW=1となりますが、水に塩を溶かすと水の一部は塩と結合し水蒸気圧が低下、PはPoより小さくなり、AWは1より小さい値となります。AW値は微生物が発育のために利用できる水分の量というところでしょうか。
 ちなみに食品衛生法規格基準においては、半乾燥肉製品のハム・べ一コン類はAW0.94以下、乾燥肉製品のジャーキー類、ドライソーセージ類はAW0.86以下となっています。
参考文献:「食品微生物学」(培風館)(鏡晃)
1996.5 ミートジャーナル




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