今さら聞けない肉の常識

第35回
<肉を冷蔵・冷凍する> 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

   食肉保存の方法はいろいろありますが、鮮度や品質を変化させず出来るだけ長期間保存する方法となりますと、冷蔵・冷凍等の冷却が最適といえます。肉の鮮度や品質の保持期間が長くなるほど低温度が必要となりますので、この目的からいえば冷蔵・半冷凍は短期保存用、冷凍は長期保存用でしょう。なお、冷蔵・冷凍の区別は食肉の筋繊維内に氷の結晶ができる温度(最大氷結晶生成温度帯)より高い温度で貯蔵するのを冷蔵、それより低い温度で貯蔵するのを冷凍と呼んでいます。
 冷蔵時の実際の温度は4℃前後ですが、この温度帯の有利な点はドリップの増加がないこと、解凍工程が不要なこと等があげられます。一方、不利な点はこの温度帯においては食肉成分を自己分解させる酵素の作用や、微生物の発育を抑える力が十分でないので、時間の経過とともに肉表面の乾燥・酸化のほか肉中酵素の働きや微生物の作用によって肉質劣化が進行します。
 冷凍時の一般的な温度は一20℃〜一30℃ですが、このような低温になると肉の自己分解作用はほとんど進まず、また、微生物の増殖等もなく、乾燥・酸化等の変化も抑制されてきます。しかし、この冷凍貯蔵も永久的なものではなく、長期になると少しずつ変化してきます。
 冷凍した肉は使用に際し解凍しなければなりませんが、その時いかにドリップを出さないようにするかが最大の問題。最大氷結晶生成温度帯(下図参照)の通過時間の長い緩慢凍結の場合、筋組織は徐々に凍り、筋漿内の水のみが凍ります。その結果、筋漿内の塩分濃度が高まり浸透圧の関係から筋組織が破壊されます。また、氷結晶の形は大きく、数が少なく、分布もバラバラで細胞外凍結が多く、氷結晶の圧迫によって筋組織の破壊が起こります。そのため解凍時には氷結品の溶けた水は筋組織に吸収されず、ドリップとなって外に流出してしまいます。
 一方、通過時間の短い急速凍結においては、氷結晶の形は小さく、数が多く、分布状態な均一的で細胞内凍結が多くなります。肉質面では、微細な氷結品が平均に分散している細胞内凍結が好ましいのです。また、筋肉蛋白質の凍結変性がもっとも起こりやすい温度は、一2℃〜一3℃といわれており、この点からも通過時間は短い方が良いといえるでしょう。
 解凍時に流出するドリップは氷結晶の溶けた水ですが、この中には蛋白質、ペプチド、アミノ酸、乳酸、ビタミンB複合体等種々の塩類が含まれていますので、重量減少のみをならず、栄養・風味等の成分も失われます。ドリップの程度は、肉の大きさ、形、肉質、カット方法、解凍方法等の要因もありますが、最大の要因は氷結晶生成温度帯の通過時間によるものです。
参考文献:「食肉・肉製品の科学」森田重慶監修、学窓社。 (鏡晃)
1996.4 ミートジャーナル




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