今さら聞けない肉の常識

第34回
<霜降り肉の組織> 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 先日の新聞で食肉加工メーカーがパソコンを使って牛肉の霜降り度を判定,発注するシステムを開発したと報じられていましたが,霜降り内の組織はどのようになっているのかについて述べてみたいと思います。
 私どもが食べている畜肉は,大別して筋繊維,結合組織, 脂肪のほか,血管,神経,リンパ等から構成されています。筋肉は,意識,無意識に関係なく収縮弛緩の運動を行うので随意筋とも呼ばれる一方,骨とともに体を支えているところから骨格筋とも呼ばれる横紋筋,心臓を形成している心筋,血管,子宮や消化器等を作っている平滑筋の3種類に分類できます。
 食肉用家畜の場合,ほとんどすべてが利用されていますので心筋,平滑筋も食用にはなっていますが,一番の主体は運動に必要なエネルギーをたくさん貯え,栄養素を豊富に含んでいる横紋筋(骨格筋)なのです。
 骨格筋の組織は,筋原繊維と呼ばれる物が数十〜数百規則正しく配列した物が筋繊維で筋内膜という結合組織で囲まれ一束を形成。これらの束が複数集まり筋周膜という結合組織でまとめられ,さらに筋周膜で束になった物が複数集まり,筋膜(筋上膜)と呼ばれる厚く堅い結合組織の膜でおおわれ,1本の筋肉として構成されています。
 外側の筋膜は,束ねるという以外に,筋繊維の末端では力のよりどころを与え,中間では筋収縮の時の滑り良さを与える等の役割があるといわれています。
 結合組織を構成している繊維は,引く力に強い「膠原繊維」が大部分を占めていますが,酸,アルカリ,熱に強い「弾性織推」,上記2つの特徴をもち細部に分布する「細網繊維」等があり,ほかにタンパク質と多糖類から成る基質と遊走,肥満,色素等の各細胞からできています。
 筋肉と血管,神経の関係は,血管,神経とも筋上膜から筋周膜に入り,最終的には血管は筋内膜に併接して走る毛細血管となります。一方神経は,筋内膜を通り抜け,直接筋細胞膜の表面にアメーバー状に付着します。そして血管,神経ともに筋細胞内には侵入しません。
 脂質は,皮下,腎臓周囲,筋肉間にある脂肪を蓄積脂肪と呼び,筋肉,内臓等の組織にある脂肪を組織脂肪と呼んでいます。筋質の含有量,脂肪酸組成は,家畜の種類,品種,年齢,性別,飼料,脂肪沈着部位等によって違ってきます。
 一般的に筋周膜より中には脂肪の沈着はしにくい物なのですが,良い飼料管理によって肥育された家畜は内臓周囲,皮下組織,筋上膜,筋周膜,筋内膜そして筋鞘まで,とくに血管の走っている周辺に脂肪の多くが沈着してきます。これらの脂肪の沈着した筋肉を一般的に「霜降り肉」と呼んでいます。筋周膜が細かく分布し血管系が良く発達している筋肉の方が脂肪分布も細やかで溶けるような軟らかい「霜降り肉」になるようです。
 参考文献:「食肉・肉製品の科学」森田重廣監修,学窓社

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