今さら聞けない肉の常識

第29回
く緬羊肉の特性−その2−> 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 緬羊肉は,外国では牛肉,豚肉より珍重され,フランス料理や晩餐会等の高級料理に用いられていますが,日本においてはなじみが薄く,一般的ではありません。
 緬羊肉は,と体の老若によって.ラム(Lamb)とマトン(Mutton)に大別されていますが,さらに詳しく,ホットハウス(生後60日〜120日)スプリング(同120日〜365日),ラム(同8カ月〜12カ月),イヤリング(同12カ月〜20カ月未満),マトン(20カ月以上)に細別されています。
 一般的に,12カ月未満の子緬羊の肉をラムといい,肉色は淡い赤色で,肉質は非常に柔らかく, 特有の匂いもなく,どちらかといえば,牛肉・豚肉に似た香気があり,テーブルミートとして消費されています。
 マトンは20カ月以上の成緬羊の肉をいい,肉色は赤色が濃く,肉質は豚肉より軽く,緬羊肉特有の匂いがあります。昔は焼肉料理等にも消費されたのですが,近年では主にハム・ソーセージなどの加工原料用肉として使用されてることが多くなっています。
 ちなみに,オーストラリアの輸出用規格においては,緬羊の永久歯の門歯の数が,0個のものをラム,1〜8個をマトンと区別していますが,ニュージーランドでは上記のような一般的な区分をしています。
 緬羊肉,とくにマトン肉は緬羊特有の匂がしますが,これは飼料として食べた草によるもので,主に脂肪がにおうようです。カプリル酸(オクタン酸ともいい,ヤシ油,やぎ乳脂中にもグリセリドとして含まれています)と呼ばれる炭素数の少ない脂肪酸が主体のようです(詳しくは95年6月号本欄「畜肉脂肪の色とにおい」参照)。
 そのため,草を食べる期間の短いラム肉は匂いが薄いのです。また,緬羊は肥育しても脂質が筋肉間に蓄積され,筋鞘・筋周膜まで脂肪組織化された「牛肉の霜降り肉」のような肉は出来ないようです。
 緬羊肉の熟成期間は,10日から14日くらいで牛肉の7日から14日と似ています。ちなみに,豚肉は3日から7日と短く,さらに鶏肉は数時間というところです。その他,肉色・脂肪の色状・成分等が牛肉に似ていますが,牛肉よりは水分が少なく,脂肪が多く,脂肪融点が高いのが特徴です(表)。
 外国の主な料理法として,モモ肉に香辛料を付け,油を注ぎながら強火で焼くフランスのラム・ロースト。日本の成吉思汗の元祖といわれている中国のカオヤンロー。羊肉の角切りをトマト,ピーマン,玉ねぎ等と交互に串刺し,底火で焼く旧ソ連のシャシリック料理.インド,トルコ,アラビア諸国のシシカパブ料理等がありますが,やはり串焼き,網焼き等の直火高温の料理法に向いた肉といえます。
 付着している脂肪は取り除き,焼きながら脂肪を落とした方がおいしいようで,それにはやはり,成吉思汗料理のあの独特の鍋が最適のようです。なお,日本のしゃぶしゃぶ料理は,緬羊肉をスープの中で洗うようにして煮る北京料理のシュワンヤンローが元祖といわれています。     (鏡 晃)

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