今さら聞けない肉の常識

第28回
<緬羊肉の特性−その1―>

先日、学生と共に士幌農協・牛肉処理場の見学に行ってきました。北海道といえば、広大な牧草地、そこで食べたジンギスカン料理の味は格別でした。ジンギスカン(成吉思汗)は遊牧部族の一君長から身を起こし、大蒙古帝国を築いた人物です。それがどうして、日本では緬羊の焼肉料理の名前になったのでしょうか。
 緬羊は、羊毛あるいは、緬毛と言われる繊細な動物繊維を生産する唯一つの家畜で、野生の緬羊が家畜化されたのは、牛・豚よりも古く約1万年以上前といわれています。緬羊飼養は、旧約聖書等にも出てくるように古代の人々は毛・皮以外に肉・脂すべてを利用し、宗教的にも深い関わりのある動物なのです。
 元来、緬羊は粗食に耐え、飼料の少ない乾燥地でも生きていけることから、食糧の乏しい移動性民族である遊牧の民には好都合な家畜だったようです。ちょうど牛や豚が定住性農耕民族の家畜として飼養されてきたのとは対照的です。
 日本においては、日本書紀に「羊2頭百済(くだら)より貢(たてまつ)る」とあり、大陸から渡来した最初の羊と思われます。明治時代になって羊毛の消費が急激に増加し、自給自足するため政府の奨励によって本格的な緬羊飼養が始められましたが、多雨多湿・寄生虫病・良質の牧草不足等から失敗が続き、1908年になって北海道・月寒の種畜場で牧羊が成功し今日に至っています。
 しかし、日本の緬羊飼養は、特異な形態で外国のような放牧多頭の飼養方法ではなく、農家の副業的な方法で1〜2頭飼育が大部分でした。羊毛生産のため一時期には95万頭を記録しましたが、安い羊毛の輸入増加に伴い国内生産の意義を失い、1975年には1万2000頭まで減少してしまいました。
 その後、北海道・東北地方を中心に肉用種のサフォークを主として少しずつ増え1990年には約3万頭までなりましたが、以後減少傾向にあります。
 現在、日本で消費されている羊肉は99.5%がオーストラリア、ニュージーランドから輸入され、国内産はわずか0.5%です。独得の匂い、低級で安い肉のイメージ、料理法の少なさ、精肉としてあまり市場に出ないからでしょうか。大部分はソーセージなど加工用に用いられ、ジンギスカンやしゃぶしゃぶなどテーブルミートとして使われるのは、わずかです。
 消費者の高級指向なのでしょうか。需給量も、牛、豚肉が増加しているのに対し、緬羊肉は減少しています。
 成分的には、下表のとおり牛肉に似ており、必須アミノ酸類もそろっており栄養的にすぐれているのです(牛肉、豚肉の成分は95年2月号本欄参考)。
 ジンギスカンは日本のオリジナル料理といわれていますが、モンゴル料理のカオヤソロー(拷羊肉)を中国の北京では鉄格子状の綱鍋で羊肉の薄切りを直焼きし、それを成吉思汗料理といっており、これが入って来て日本流になったようです。(鏡晃)
1995.9 ミートジャーナル




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