今さら聞けない肉の常識

第24回
 <食肉の飽和脂肪酸と高コレステロール血症>日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

   焼き上がったステーキを口にして、旨いと感じるのは、調理の加熱で溶けた脂肪が肉のエキスと交ざり、舌の上でまろやかな刺激をかもし出してくれるからですが、脂肪そのものには舌に感じる化学的な味はありません。ところで、肉のおいしさを引き立たせてくれる脂肪が、近頃は悪者択いにされています。本当のところはどうなのでしょうか。脂肪は体内にあっては重要な成分なのです。細胞膜をつくり、効率よいエネルギー源となります。また、血液を固まりにくくするとか、尿を出しやすくするなどの調節をするエイコサノイドの原料(肉の脂肪にはありません)となり、ホルモンの原料となるなど、私達にとって、なくてはならない大切な成分のひとつです。前回、脂肪酸の構造を書きましたが、もう一度思い出してみて下さい。二重結合をもたない飽和脂肪酸、二重結合を1つもつ一価不飽和脂肪酸、2つ以上の二重結合をもつ多価不飽和脂肪酸があります。多価不飽和脂肪酸は、二重結合の始まる位置によって、オメガ6(リノール酸、アラキドン酸など)とオメガ3(α−リノレン酸、EPA、DHAなど)に分けられます(図1)。私達人間を含む高等動物は、必要な脂肪酸の大部分を体のなかでつくることができますが、オメガ3とオメガ6だけはつくれません。リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などを食物から摂る必要があります。これらは必須栄養素として扱われ、ビタミンFとも呼ばれています。そして最近はオメガ3系列の脂肪酸がエイコサノイドの原料として、その重要性がクローズアップされています。さて、話を食肉の脂肪酸にもどして考えてみましょう。高コレステロール血症との関係から肉の脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸が悪者択いされ、飽和脂肪酸はコレステロール値を上昇させるというのが定説でした。しかし、80年代後半になると、オレイン酸(一価不飽和)、ステアリン酸は違うといわれ、現在は、さらにパルミチン酸も、むしろ総コレステロールを低下させ、LDLコレステロールも同様に低下させるという報告があります。牛や豚の脂肪を構成する脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸が80〜90%程度を占めています。したがって、肉類は脂肪酸の構成からみて、むしろ問題の少ない食品に入れてもよいのではないかといわれています。問題なのはカロリーの過剰摂取です。カロリーを適正に摂った場合、その25〜30%を脂肪のカロリーで摂り、その内訳は、一価不飽和脂肪酸(15%程度)、多価不飽和脂肪酸(10%以上に増やさない)、飽和脂肪酸(10%以下)の順の摂取量とするのがよいようです1)。この場合、動物性、魚介類、植物性脂肪のバランスよい摂取が望まれるのはもちろんのことです。
1)脂肪酸に関する最新情報、板倉弘重:Health Meat ’93,4−9。
(平野正男) 1995.5


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