今さら聞けない肉の常識

第23回
<脂肪のかたさが畜種によって違う理由> 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 ハム・ソーセージは冷たいままで食べた時でも舌の上で脂肪がとろけて.なめらかな舌ざわりを与えてくれます。これが牛脂であったらこういうわけにはいきません。牛脂の場合は加熱されて初めてなめらかな舌ざわりが出てきます。このように脂肪のかたさが動物種によって違う理由は,脂肪を構成する脂肪酸の組成の違いに由来します。
 脂肪酸は非常に多種類がありますが.基本的な横造はカルポキシル基の頭とメチル基の尾の間を両側に水素を従えた炭素の鎖で繋いだものです。図1のように,4本の手をもつ炭素原子同志が繋って残った2本の手が水素原子と結びついて遊んでいる手がない場合,つまり水素原子によって飽和状態になっている脂肪酸を飽和脂肪酸といいます。一方,炭素原子は互いに2本ずつの手で結びつくこともでき,これを二重結合とよぴますが,炭素鎖に二重結合を含む脂肪酸を不飽和脂肪酸とよぴます。二重結合が1カ所であれば単価不飽和脂肪酸,2カ所以上であれば多価不飽和脂肪酸として区別します。炭素鎖の長さ,二重結合があるか,いくつあるか,その位置はどこかによって脂肪酸の性質は変化します。
 脂肪は動物牲でも植物牲でも飽和,不飽和の脂肪酸を数種類混合して含んでいます。その組成比は畜肉では単価不飽和脂肪酸が多く,鶏肉,魚介類,植物油の順で多不飽和脂肪酸の割合が多くなりますく図2)。
 脂肪酸の二重結合の多寡を示す価にヨー素価という数値があります。牛脂で25〜60,豚脂で46〜70,馬脂で71〜86,コーン油で88〜147,イワシ油で163〜195となっており,畜肉脂肪よりも植物油や魚油の脂肪酸の方が二重結合を多く含むことがわかります。多価不飽和脂肪酸の割合が多いほどその脂肪の融点が低い傾向がみられるのです。
 牛など反芻類の体脂肪は豚脂よりも融点が高く,かたい。馬脂は多価不飽和脂肪酸を多く含むため軟質で,魚油,植物油は一般に液体です。脂防の融点は牛脂が40〜50℃,豚脂が33〜46℃,馬脂が30〜43℃,鶏脂が30〜32℃,コーン油が一18〜−10℃で,魚油は常温で溶けます。
 融点の差が味覚に及ぽす影響は大きく,人体温に近い融点をもつ豚脂を用いたハム,ソーセージは冷食してもなめらかな舌ざわりであり,馬さしについても同様に冷食できる理由の1つと考えられます。(平野正男)

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