今さら聞けない肉の常識

第22回
<肉の成分が部位によって異なる理由〉 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 肉にも牛肉あり,豚肉あり,鵜肉ありで,さらに同じ畜種でも部位によって肉の成分がかなり異なります。なぜそうなるのか,鉄の含量に問題を絞って考えてみましょう。
 筋肉は大別して赤筋と白筋に分類することができます。このような区別は,それぞれの筋肉のもっている生理学的な機能の発現と深い関わりがあります。筋肉のなかでも頻繁に使われるものは,効率よくATPを再生する必要があるため,その中でATP再生が効率よく行われるミトコンドリアという顆粒や細胞内に酸素を蓄えるためのミオグロビンを多量に含んでいます。ミトコンドリア中の酵素タンパク質やミオグロビンは鉄を含むため赤い色をもっているので,そのような筋肉は赤黒くみえ,赤筋と呼ばれます。これに対して,時々しか使われない筋肉は,主に酸素がなくても反応を進めることのできる解糖系によってATPを再生するので,ミトコンドリアやミオグロビンの含量が低く,このような筋肉は色が薄いので白筋と呼ばれます。赤筋と白筋の違いをまとめると表1のようになります。
 筋肉のもつ役割の大きな部分は運動を司どることです。脳からの情報を最終的に運動に変換するのですが,その表現の仕方の違いによって筋肉の構造と構成成分に差がでてくることが表1から読みとれます。
 赤筋は線維が細く,ミトコンドリアやミオグロビンをたくさん含んで,長時間休息なしに作用する傾向があり,白筋は線維が太く,ミトコンドリアやミオグロビンの含量が少なくて,休息,回復を繰り返しながら短い急激な作用をする傾向があります。その他中間型が存在します。
 しかし,いずれの筋肉も.ごく少数の例外を除いては,赤筋線維のみから構成されている筋や白筋線維のみから構成されている筋肉はありません。赤筋では少なくとも赤筋線維と中間線維の2種類が,白筋線維では常に白筋線維,赤筋線維,中間型線維の3種類が存在しています。
 筋肉の生理的な活動はその筋を構成している筋線維の優勢な方の働きとして現われます。
 表2は豚のヒレとロースの成分を比較したものですが,姿勢維持のために絶えず持続的な張力を発生し続けているヒレ肉は,運動しなければ使わないロース部分に比べて鉄の含量が高いことがわかります。
 これは一例に過ぎませんが,筋肉間の変異はずっと複雑で品種,性,年齢,部位,訓練,栄養状態などが反映されるものです。その他に死直前とその後の貯蔵時での取扱いによっても成分は変わってきます。(平野正男)

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