今さら聞けない肉の常識

第21回
<豚肉はヘルシーか?〉 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室
 豚肉といえば,安い,脂肪が多いといったイメージが強く,牛肉のような高級感,鳥肉のようなへルシー感がありませんが,特徴はないのでしょうか。
 豚肉の特徴は,他の肉類に比ベビタミンB1含有量が断然多いということです。ビタミンB1はエネルギー代謝に密接な関係を持ち,体内の糖質がエネルギーになる時に必要とされるビタミンなのです。もし欠乏しますと,物忘れ,集中力散漫,肩こり.脚気等を引き起こします。
 豚肉は全体的に繊維が短く,他の肉に比べて比較的柔らかく消化率が良いという特性もあります。筋肉は細く長い筋線維(細胞)と,これらを束ねる結合組織(コラーゲンと呼ばれる蛋白質からできている膜)から構成されています。そして,筋内膜,筋周膜,筋上膜によって1つの筋線維束(筋束)になりますが,その筋線維束の太さが細く,それらを囲む膜の厚みが薄ければ「キメの細やかな,柔らかい肉」になります。
 動物は,種類にもよるが部位によって筋肉の運動量が違います。運動量が多いほど太い筋線維の束と厚い膜になり,「キメの粗い,硬い肉」となります。豚は運動量があまり多くないような飼育方法ですので柔らかいのですが,柔らか過ぎるという問題点も出ているようです。
 豚肉の脂肪は,カットすることにより,脂肪量を減らし,蛋白質の割合を高めることができます。また,豚脂はリノール酸等の不飽和脂肪酸が多く,比較的コレステロールの心配はないといわれております。コレステロールは脂肪の一種で,動脈硬化を引き起こす悪者として扱われていますが.脂肪の消化,促進,副腎皮質ホルモン,性ホルモン等を作るほか骨の形成に必要なビタミンDの合成にも関わる大切な働きをしています。
 一方,豚肉以外の牛肉,鶏肉の特徴は何なのでしょうか。牛肉には鉄分が多く含まれ,とくに野菜に含まれている無機鉄と違い,蛋白質と結びついたヘム鉄ですので吸収がよく,赤血球を作る助けをします。鶏肉には脂溶性のビタミンAが多く,また必須アミノ酸をバランス良く含んでおり,低カロリー,高蛋白質の食肉です。
 下表をみれば,豚肉は意外にへルシーなものというのが分かっていただけると思います。肉の.種類,部位によって,それぞれ良い点があります。目的,用途に合わせて選び,料理するのが賢い消費者といえるでしょう。
 【訂正】1994年12月号の本棚(第19回)の人畜共通寄生虫の説明で.言葉不足からエキノコッカスに感染した豚肉を食べると人間に感染するようにとれる文章でした。お詫びするとともに次のように訂正します。エキノコッカスの成虫は宿主のキツネ.イヌ等に寄生し.宿主の便中に排出された虫卵を人や豚等が口から入れると.腸内で包虫となり,それに伴い各種の症状を引き起こします。人.豚は中間宿主ですので豚から人へ.人から人への感染はありません。
           (鏡 晃)



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