今さら聞けない肉の基礎知識

第16回 <ソーセージはなぜくっつくのか> 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室
 これについての答の大要は本連載第5回「塩による保水性と結着性」でとりあげられていますが、間い合わせもありますので再び考えてみましょう。
 ソーセージの結着性、すなわちソーセージをくっつける担い手は筋原線維タンパク質中のミオシンであることがわかっています。肉製品に含まれる食塩濃度を2〜5%とすると、肉中の塩濃度は0.5〜1.0M(モル)の範囲になります。この塩濃度ですと、塩漬時に筋原線維からはミオシンだけでなく、アクチンとミオシンが結合したアクトミオシンが比較的多く溶解し抽出されてきます。細胞外へ溶出されたミオシンとアクトミオシンによって、塩漬肉は次第に粘り気を帯びてきます。  ミオシン分子は洋梨型の2個の頭と棒状のしっぽからできている線維状タンパク質で、0.6M塩溶液での状態を電子顕微鏡で調べてみると図1−Aのようになっています。そしてアクチンが加わると図2のようにミオシンの2個の頭が2本のアクチン・フィラメント間に橋かけ結合をつくるため、さらに粘欄さが増してきます。
 カッティング中に加えられた豚脂肪は、非常に細かい脂肪粒子にまで砕かれ、その表面は粘欄なミオシンとアクトミオシンを含む塩溶液で覆われ、最終的には安定で均一な水中油滴型ソーセージエマルジョンが出来上がります(水中油滴型とはマヨネーズのように油が水中に分散したものをいう)。この状態を示したのが図3です。図中では筋原線維の断片や結合組織の線維が加わっている様子がわかります。  次の加熱工程でタンパク質溶液は凝固していきます。その様子をミオシン分子で調べてみますと、まず43℃でミオシン分子の頭部同士がくっつき合い(図1−B)、55℃でしっぽの部分が橋かけ結合によって互いに絡まり合い(図1−C)、加熱温度がさらに上昇して60〜70℃では3次元的な網目構造をつくることが分かっています(図1−D)。そして、この温度範囲とpH6.0の時に最も安定な加熱ゲルをつくるといわれています。この条件は実際のソーセージ製造工程で行われている塩漬肉のpHと加熱温度に大体同じなのです。もう一度カッティングを終わったソーセージエマルジョンの様子を図3でみてみますと、ここにはミオシンのほかアクトミオシン、筋原線維の断片や結合組織の線維が加わっているためミオシン分子単独の場合よりも網目構造はずっとしっかりした形で凝固します。そして出来上がったソーセージはこの網目構造の中に多くの水を保持することができます。 (平井正男)
ミートジャーナル 1994.9



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