今さら聞けない肉の常識

第15回
く加熱の目的と方法〉 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 一般的なハム・ソーセージの製造工程には水煮(ボイル)工程があり,製品を加熱します。それは「乾燥食肉製品,非加熱食肉製品,特定加熱食肉製品以外の製品には,中心部の温度を63℃・30分間加熱する方法,またはこれと同等以上の効力を有する方法にて加熱殺菌すること」と定められているからです。
 加熱の目的効果は大きく分けて次の4つであるといえます。
 1)香味の向上
 加熱によってアミノ酸等の活動が促進され,香り風味がよくなってきます。
 2)保存性の向上  加熱によって食品衛生上有害な微生物やトリヒナ等の寄生虫を死滅させます。
 3)発色の促進
 加熱により発色反応を進行させ,色素タンパク,ミオグロビンなどの変性活動によって,熱に安定した塩漬肉色を発現させます。
 4)弾力性の向上
 熱によって肉のタンパク質を変性凝固させ,適度な硬さと弾力性に富んだ製品にします。
 加熱の方法には,製品を直接湯の中に浸漬する直接加熱方法(湯煮法)と,温度を上げた庫内で加熱する間接加熱方法(蒸気煮法)があります。
 湯煮法は製品を直接湯槽中に浸漬するため,加熱効率はよいのですが(間接加熱法に比べてよい。肉の熱伝導率は大変悪いのです),天然ケーシングや通気性のある人工ケーシングを使用した場合,肉エキス分や塩漬剤の一部が流出してしまい,味が変わったということがあります。しかし,一方では発色に使用されずに残った亜硝酸塩が場中に流出して,製品中の残存亜硝酸塩掃が少なくなることもあ るのです。
 蒸気煮法は蒸気や湿度を含んだ熱風を用いて加熱します。加熱効率は悪いのですが,全自動スモークハウス等を使用した場合,乾燥・燻煙・ボイルを同じ庫内で,しかも自動化で行えるため,大変合理的なのです。その上,肉エキス分や塩漬剤の流出などもほとんどないといっていいほど少なくなります。
 図は実験的に創ったモデルソーセージの色素転換率と残存亜硝酸塩量のグラフです。ソーセージエマルジョン形成段すぐ各加熱工程に移ったものを0日区とし、4℃で1日〜4日塩漬したものを1日区〜4日区として乾熱(乾燥)、再乾熱(燻煙),水加熱(湯煮),保存(パック後4℃で冷所保管)したものです。各加熱工程による亜硝酸塩と色の変化,再加熱から水加熱後の残存亜硝酸塩量の減少が表われています。なお,この時湯煮に用いた使用後の湯の中には平均50ppm前後の亜硝酸塩が人っていました。(鏡 晃)



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