今さら聞けない肉の常識

第14回
<燻煙の良否を決める条件は?〉 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 燻煙製品の仕上がりの良否を決める条件はたくさんありますが,燻煙材の種類,加熱燃焼の際の温度,煙の量,スモークハウス内の空気の速度,スモークハウス内の温度・湿度,加工品の表面の状態によって大方は決まります。
 煙の密度が高いほど煙の吸着は良く,空気の速度が早いほど吸着が促進されますが,速度が早いと煙の密度は低くなってしまいます。また,湿度が高ければ煙の吸着は良いのですが,発色は悪くなります。反面,製品の表面が乾燥していれば,煙の吸着が悪くなりますが,発色は良くなります。このように相反する条件がたくさんあります。
 一般的には燻煙時の温度帯によって,次の4つに区分されています。
 (1)冷燻法:10℃〜30℃の温度帯で燻煙を行います。主としてドライソーセージ,骨付ハム,ラックスハム,べ一コン等で燻煙後水煮等の加熱処理工程のない製品に向いています。燻煙時間が長くなりますので歩留まりがよくありませんが,長時間の乾燥と熟成によって保存性が良く,風味が良くなります。
 簡易なスモークハウスでは低温を維持するのが難しいですが,オガクズを固形化した燻煙材を用い,秋冬期等の季節によっては十分この温度帯を保っことができるでしょう。
 (2)温燻法:30℃〜50℃の温度で燻煙を行います。主にロースハム,ソーセージ類,ボイルドベーコン等,乾燥燻煙後、水煮等の加熱処理工程を行う製品に用います。燻煙の吸着等がちょうど良いのですが,欠点としてこの温度帯は脂肪が溶け始めたりしますので,肉質はやや硬くなってしまいます。その上,細菌の繁殖しやすい温度帯でもありますので,長時間行う時には衛生上,十分注意が必要です。
 (3)熱燻法:50℃〜80℃(50℃〜90℃と区分する場合もある)の温度帯ですが,70℃前後で行うのが多いようです。主としてハム類,ボイルドベーコン類,ソーセージ類等の製品があります。
 この温度帯は,表面のみ強く硬化し,内部は比較的水分を多く含んで凝固しますので,弾力性に富んだ製品が出来上がります。ただ,ある程度までは急激に乾燥し,燻煙が付着しますが,それ以降はあまり効果がありません。短時間で終了し,しかも発色が良いので,労力削減,作業の合理化等の長所がある反面,熟成,風味等の面では劣るところがあります。また,簡易なスモークハウスでは温度調節が難しい点も欠点といえます。
 低い温度のスモークハウスに製品を入れてから,徐々に庫内の温度を上げ,目的の温度になったら一定時間を保つことが大切なのです。製品に対しての急激な温度変化は,発色ムラを生じ,中心部に未発色の部分ができることがあります。
 なお,肉の熱伝導率は大変悪く,木材と同じくらいです。
 (4)焙燻法;80℃以上で燻煙します。特殊な製品向きの燻煙方法で,カツオ節の場合は140℃で行っています。燻煙特育のスモークフレーバーや抗菌作用等に関与しているフェノール類は,約400℃の燃焼温度で最も多く発生しますが,この温度帯では発ガン物質といわれているベンツピレン等がリグニンの分解によって生ずることが認められております。そのため、煙の発生温度を340℃以下にして生成を防ぐことが望まれております。
 なお、ドイツでは「燻煙食品中のベンツピレン含量を1ppb以下」と法律で規制されております。(鏡晃)

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