今さら聞けない肉の常識

第11回
く燻煙前の乾燥の目的と効果〉日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 ハム・ソーセージ製造工程でケーシングに充填後、乾燥・燻煙・水煮という工程がありますが、燻煙前の乾燥はどのような目的、効果があるのでしょうか。燻煙の目的効果はいうまでもなく、煙の中に含まれている種々の有機化合物を利用し保存性を高めると同時に、スモークフレーバー、スモークカラーと光沢等を与えます。また、亜硝酸による発色を促進、肉表面の凝固と脂肪酸化の抑制効果などがあります。水煮の目的・効果は、出来上がった肉製品の殺菌、熱による肉色の発色完成、肉牛酵素の不活性化、蛋白質の熱凝固による適度な硬さと弾力性を与え、そして香りと風味の向上等があります。ドライ製品のサラミ系製品のように、乾燥工程が最終工程の製品では比較的低い温度で長期間(15℃前後で15〜20日間)風乾熟成を行います。それによって特有の風味と貯蔵性のある製品が出来上がります。これは水分活性(Aw)値を低下させ、微生物の生育を抑え、保存性を高めているのです。Aw値は食品の成分、添加物、pH等が影響してきますが、一般に細菌は0.9〜0.95、酵母はO.8、カビ類は0.7〜0.8で生育が止まるといわれております。そしてドライソーセージ系は0.80〜0,885、生ハムは0.96以下と決められております。それに対し、セルベラート系は乾燥後、燻煙を行います。煙成分によって保存性と風味を高め、サラミ系とは一味違ったスモークフレーバー、スモークカラーのある製品に仕上がります。冒頭にあげた疑問に戻りますが、燻煙前の乾燥工程はどのような意味があるのでしょうか。最近は乾燥すると製品歩留まりが悪くなるといって一部の製品を除き省略するか、短時間で済ませているようであまり重要視されていません。燻煙前の乾燥の効果は簡単にまとめると一。@肉製品の表面を多孔質にし、煙の成分が浸透しやすいようにする。A熱による発色作用を促進する。B美しいスモークカラーと光沢を与える。こうしたことから本格的な燻煙を行うためには、乾燥は重要な工程の一部で、手抜きは許されないものなのです。乾燥庫に肉製品を吊り温度を与えますと、表面に水滴がつき始めます。次に、時間の経過とともに水分が蒸気し、ケーシング表面が乾燥してきます。一方、ケーシングの中の肉には、蛋白質の熱凝固による弾力性のあるうすい膜が作られてきます。それと同時に、肉製品の表面は多孔質となり、煩煙の成分が内部まで浸透(約10m前後)しやすい状態になってきます。肉製品の表面に水分があると、燻煙しても着煙状態が不均一で縞模様を生じてしまいます。また、表面のみの付着で肉内部には浸透していきません。そのために乾燥する必要があるのです。乾燥が重要といっても、過度に乾燥しすぎますと、表面のみが硬く乾燥し、内部の水分が蒸発しにくくなってしまいます。そのようになりますと、燻煙中の煙成分付着が悪く、うすい色に仕上がってしまいます。温度はゆるやかに上げ、適度な湿度を与えつつ乾燥することが必要なのです。燻煙の本来の目的である保存性を高めることは、冷蔵庫の普及、包装技術の進歩によって必要性が薄れてきてます。本格的な燻煙製品は数少なく、臭いと色だけの燻煙製品が多いようです。燻煙工程前の乾燥工程もそのうちいらなくなるでしょう。(鏡晃)

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