今さら聞けない肉の常識

第6回
<なぜ、ハムはビンク色か〉 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室

 塩漬は,ハム・ソーセージ等を製造する上で,最も基本的でかつ重要な工程です。肉を塩漬する目的は,他の植物性の塩漬けとは異なり,保存を良くする防腐効果を出す,保水性を良くする,結着性を良くする,肉色を発色させる,熱成風味をつける等があります。そのため,塩漬剤として,食塩のみならず,発色剤,砂糖,各種添加剤,各種香辛料等が使われていますが,塩漬中の発色剤の変化はどうなっているのでしょうか。
 発色剤添加の目的に肉色の固定があります。新鮮な肉を調理すると,肉は赤色から褐色に変化してしまいます。これは生肉に含まれている肉色素のミオグロビンが熱により変化し,メトミオグロビンという物に変化するからです。一方塩漬した肉製品は,加熱しても変化せず,美しいピンク色をしています。これはミオグロビンが塩漬中に硝安塩と反応を起こし,ミオグロビンが変化したことによるものです。
 ミオグロビンと硝酸塩との反応を簡単な模式図にまとめると図のようになりますが,これは完全に解明されているわけではなく,他の考え方もあります。
 硝酸塩を添加すると,ピックル(漬け込み液)中にある数種類の硝酸還元細菌の作用により亜硝酸塩へと還元します。次に亜硝酸塩は肉組織が持っている還元力,または,還元剤として添加された添加物等(アスコルビン酸等)によってニトロソ(一酸化窒素)と水になります。ニトロソは肉中のミオグロビンと作用し,ニトロソメトミオグロビンになります。ニトロソメトミオグロビンは,肉組織が持っている還元作用や還元剤として添加された添加物等の力によってニトロソミオグロビンに変化します。ニトロソミオグロビンこ乾燥,燻煙,水煮等の熱が加わると,ニトロソヘモクロモーゲンという色素に変化します。これが安定したピンク色の色素で,サーモン・ピンクと呼ばれるきれいなハムの色なのです。
 その他,硝酸塩の働きとして,抗菌作用があります。腐敗菌の増殖,毒素の生産,タンパク分解作用等の阻止があり,とくに食中毒菌のポツリヌス菌の増殖抑制は良く知られているところです。
 次に,硝酸塩または亜硝酸塩を添加し,塩漬,加熱した製品には独得の風味が出てきます。最後に,これは良い働きではありませんが,ニトロソアミンを形成することです。亜硝酸が第二級アミンと反応してニトロソアミンを形成,これが発ガン作用を有するといわれています。しかし今のところ,完全に解明されてはいません。(鏡 晃)



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