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シロアリ女王の分身の術

跡継ぎ女王を単為生殖で生産

平成21年3月24日 岡山大学


概要
本学大学院環境学研究科松浦健二准教授らの研究グループは、シロアリの女王が有性生殖と無性生殖を巧みに使い分けており、自分の後継の女王は単為生殖で作り、その他の働き蟻や羽蟻は有性生殖で生産していることを世界で初めて発見し、米国科学雑誌Scienceに平成21年3月27日に発表します。ヤマトシロアリの巣は一組の王と女王で創設されますが、巣が大きくなると、新たに多数の二次女王が出現し、老いた女王に替わって繁殖を引き継ぎます。遺伝子分析の結果、女王は跡継ぎの女王を専ら単為生殖で作り、死後も変わらず自分の遺伝子を残し続けていることが分かりました。また、王と二次女王に血縁はないため、近親交配による弊害も見事に回避されていることが判明しました。
身近な昆虫のシロアリですが、実はその生態には多くの謎が残っています。今回の発見は、これまでのシロアリの繁殖に関する理解を一変させ、生物の「性」の利益とコストを浮き彫りにするものです。

業績
松浦健二(岡山大学大学院環境学研究科准教授)らの研究グループは、これまで謎に包まれていたヤマトシロアリの繁殖システムの実態解明に挑戦し、大規模な巣の採集と緻密な遺伝解析により、女王が有性生殖と無性生殖を必要に応じて使い分けているという、驚くべき繁殖の実態を明らかにしました。コロニーを創設した女王は、複数の後継女王を単為生殖で生産し、一方、働き蟻や羽蟻は有性生殖で生産していることを明らかにしました。女王は自分の分身を単為生殖で産むことで、遺伝的には不老不死と同じ利益を得ています。単為生殖は自分の遺伝子を次世代に多く残すためには効果的ですが、働き蟻や羽蟻まで単為生殖で生産すると、コロニーの遺伝的多様性が低下して生存率や生産効率が低下する危険があります。女王は後継女王の生産に限定して単為生殖を使っており、コロニー全体の遺伝的多様性は高いままで維持されていることも判明しました。

<補足>
注:ヤマトシロアリ
学名はReticulitermes speratus (Kolbe)。日本で最も一般的なシロアリで、本州、四国、九州、北海道南部に分布します。5月に羽蟻が巣を飛び立ち、一夫一妻(王と女王)で新たな巣を創設します(写真1)。コロニーが大きくなると、10万匹以上になります。王はとても長寿で、ほぼコロニーの終演まで生き続けますが、女王はコロニーが大きくなると多数の二次女王と入れ替わります(写真2)。

<報道解禁日> 平成21年3月27日(金)午前4:00  
              (2:00 pm U.S. Eastern Time Thursday, 26 March 2009)
【論文題目】Queen Succession through Asexual Reproduction in termites. Scienceオンライン版(3月27日付け)
 「シロアリの単為生殖による女王継承」
 



新たな巣を創設するヤマトシロアリの王(左)と女王(右)


成熟したコロニーの二次女王と創設王(右中央)