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核酸系抗生物質の増産を目的とした放線菌の合成生物学
    近年,ノロウイルス,エボラ出血熱,鳥インフルエンザなど人畜に感染するウィルスが社会問題化しています。抗生物質はウイルスには無効で,感染して発病した場合,それを押さえ込むのは容易ではありません。抗生物質はウイルスには効かないというのが世間一般の常識ですが,ウィルス,原虫,がん細胞などにも強い薬効を示す一群の抗生物質が存在します。それら核酸系抗生物質は,生産量が極めて微量で,突然変異株の選抜を繰り返す従来の育種法では増産が図れず社会的にも活用されていません。本研究では,合成生物学の発想と計算科学を取り入れた新しい分子育種法を開発して,核酸系抗生物質の社会的利用を目指しています。

 本研究で取り組む核酸系抗生物質
 

RNAポリメラーゼ Rif-1クラスターへの多重変異の計算科学
   
 RNAポリメラーゼ/DNA/mRNA複合体 Rif-1クラスター領域
 食品総合研究所の越智幸三博士(現・広島工業大)は,放線菌の抗生物質生産を飛躍的に高める画期的な手法としてRNAポリメラーゼrif-1クラスター領域に変異を導入する転写活性化技術を開発しました。Rif-1クラスター領域のアミノ酸残基群(D337, S343, H347, R350)は,新生mRNAの3’末端から3~4番目のリボヌクレオチドに相互作用する位置にあります。これらの残基は転写開始時にはリボ核酸を鋳型DNA上に固定する為には必須ですが,リボ核酸の重合が始まると転写を抑制するブレーキとなります。我々の予備実験でも,やや疎水的なアミノ酸への置換によってシネフンギンやヌクレオシジンの生産性が高くなることを確認しており,分子間相互作用の最適化が増産への鍵になりそうです。本研究では分子動力学計算でS. incarnatusのRNAポリメラーゼ/鋳型DNA/新生RNA複合体モデルの構造最適化を行い,変異導入残基の周辺を密度汎関数で計算して分子間相互作用の定量的な解析に取り組んでいます。

主研究者 (PI) 田村 隆 tktamura(@)okayama-u.ac.jpa